1971年生まれ。武蔵野美術大学大学院修了(造形修士)。九州芸術工科大学大学院博士後期課程修了(芸術工学博士)。東西大學校(韓国)デジタルデザイン学部助教授を経て、現在に至る。デジタルメディアコンテンツ制作、インタラクションデザイン、デザイン基礎教育が主な研究分野。主な著書『かたち・色・レイアウト 手で学ぶデザインリテラシー(武蔵野美術大学出版局,2016,編著)』、『かたち・機能のデザイン事典(丸善,2011,共著)』
音楽の旋律がもつ本質的な構成要素を考慮して選出した旋律を刺激とし、視覚的要素(かたち、色)と情緒反応との関連性を調査し、旋律の構成要素と視覚的要素との相互的な関連性を考察した。その結果、かたちは旋律の「テンポ」「タッチの強度」「音程」において、「直線的―曲線的」の違いと関連性が深いことがわかった。色は、「テンポ」に対し、特徴的な傾向をみることができなかったが、その他の旋律の構成要素に対し、暖色系統、寒色系統といった色相の差違と、トーン(彩度、明度)の差違との複合的な傾向をみることができた。また、旋律の構成要素と情緒反応との相互的な関連性においては、「音階」の違いにおいて「うれしい―悲しい」と関連性が深く、その他の「テンポ」「タッチの強度」「音程」は、共通して「強壮な―なだめるような」と関連性が深いことがわかった。
モーションライドはエンターテインメントの分野で発展してきたが、今後は、他の分野においてもその社会的な実用価値が期待されている。我々は、その点に着目し、モーションライドを用いて、バーチャルリアリティ(VR)と現実世界における人間の感情効果の違いについて調査した。調査方法は、実際のジェットコースターと、それと同型のCGによる仮想のジェットコースター(モーションライドの振動と効果音と同期させたもの)を用意し、被験者の精神性生理反応を測定し、主観評価と合わせながら考察していった。
使用するモーションライドなどのVR機器は、実際のジェットコースターと比較すると、視野や振動などの稼動範囲に限界があるため、可能な限り現実に近いように設定したサンプルと、視覚情報よりも過度にモーションを加えたサンプル、またモーションを加えない視覚情報だけのサンプルを実験刺激として比較していった。その結果、被験者からVR機器による体験は、動きやスピード感などに物足りなさを感じた反面、予測できない展開に対しては効果的な反応がみられた。VR機器において人間の感情効果を増幅するためには、現実の忠実なシミュレーションだけでなく、動きの強調や省略を加え、期待感・不安感を増幅させるような演出が重要であるとわかった。
(白石は、共同で研究方法と結果考察を行った。また、実験で使用した複合環境シミュレーション装置における振動環境シミュレーションの制御プログラムを作成した。)
1995年から1997年まで行った新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究「色彩認知や色彩感情等、色彩に対する官能値の国際的データベースの構築とそれを製品や生活環境の色彩設計に反映させるマルチメディアシステムの研究開発」の研究成果の一部である、日本・中国・台湾・韓国の色彩感情のデータに着目し、その研究から10年の時間経過により色彩感情がどのように変化したか、もしくは変化していないのかを明らかにすることにあった。研究方法としては、1995年に行った色彩官能検査(質問紙法)と同様の方法で日本・中国・台湾・韓国の美術大学学生を対象に物体の記憶色や感情や意味を想起させる色について調査し、各国の集計結果から因子分析を行った。
色彩感情を全体的な視野でみれば時間経過による変化はみられず、1997年に結論付けた「7割が普遍的、3割が個別的」であることは、変わらないことがわかった。しかし、その3割の個別性の中では変動がみられ、今後の研究課題として、変動している「個別性」において何らかの規則性があるか継続的に検討していきたい。
(白石は、共同で研究方法の検討と色彩官能検査の結果の分析を行った。)