応用メディア美学
4.ライティング

ライティング(照明)とは、光と影をコントロールし、われわれの外的・内的な知覚のあり方に美学的な影響を与えることである。

今回は、主要なライティングのタイプや機能について考える。
しかし、ライティングのタイプや機能は厳密なものではなく、テーマやコミュニケーションの目的に応じて微調整されるものである。
こうした演出は音楽のような特定の美的なアプリケーションにも影響されるからだ。

すべてのライティングは《光と影の相互作用》という形でスクリーン上に表現される。

あるシーンには深く、はっきりした陰影と投影をもった速い「フォールオフ」が必要、別の場合には非常に透明な影のついた、柔らかいゆっくりしたフォールオフのライティングが必要なときもある。

最初のタイプ、つまり光と影のコントラストの強い、光と影を強調するタイプのライティングのスタイルを、「キアロスキューロ・ライティング(=chiaroscuro lighting)」と呼ぶ。

これに対して、光と影のコントラストを弱く扱う場合のライティングは「フラット・ライティング(=flat lighting)」という。

ほとんどのキアロスキューロ・ライティングとフラット・ライティングの技術は、「トライアングル・ライティング(三角照明)」と言われる原則的な写真の照明の比較的簡単なバリエーションである。

●1 標準的なライティング技術

トライアングル・ライティングの三角形のアレンジは、最も標準的な写真のライティング技術であり、ある意味で写真技術の常識である。

具体的には、バックライトをオブジェクトの真裏からカメラに向け、キーライトとフィルライトをカメラ側からオブジェクトの正面および側面に当てる。

 ・キーライト
 ・バックライト
 ・フィルライト

基準となる光源あるいは主要な照明のことを《キーライト》という。
これによってオブジェクトやイベントの基本的な形が明らかになる。

【図3.1〜6】

《バックライト》はオブジェクトの姿形を背景と分離し、光沢を与える。

《フィルライト》はフォールオフをコントロールする。

このほかに加わる光源としては、側面からの《サイドライト》、オブジェクトの後ろ、通常低い端の位置から照明する《キッカー・ライト》、そしてセットと背景を照らす《バックグラウンド・ライト》、あるいは《セットライト》がある

キッカーライトはバックライトの延長であり、バックライトの守備範囲の下からオブジェクトに輪郭を与える。

●2 キアロスキューロ・ライティング

キアロスキューロ・ライティングは、《速いフォールオフの光と影のコントラストの強い照明》のことである。

このタイプの照明の基本的なねらいは、空間性の表出、つまりモノとそれを取り巻く空間の三次元的な特性を強調し、場面に表現力を与えることにある。

キアロスキューロ・ライティングはボリューム感を作り出し、シーンにドラマ性を与える。

●キアロスキューロ・ライティングの分析

キアロスキューロでセットされたシーンを分析し、ライティングがわれわれの外向き・内向きの知覚定位にどのような影響を与えているか、つまりわれわれがイベントをどのように見るか、あるいはどのようにそれを感じるかを考えてみる。

【図3.7】キアロスキューロ・ライティング

この写真では、以下のようなキアロスキューロ・ライティングの要素が見られる。

1 限定的な照明(顔、手、背景の一部)
2 ローキーな照明(背景は圧倒的に暗く、全体の照明レベルは低い)
3 明らかに濃い陰影に見られる速いフォールオフ

この写真はアメリカの写真家ユージン・スミスの「Spanish Wake」だが、このシーンにドラマチックなものを感じることだろう。

こうした感情的なリアクションは、司教の死を悲しむ女たちという非常に感情的な主題によるところが大きいが、同時にそれはキアロスキューロ的な照明の効果でもある。

「Chiaroscuro」はイタリア語の「明・暗(chiaro = light; oscuro = dark)」という言葉である。

キアロスキューロ・ライティングは、作品の中で特に光のコントラストを強調したポスト・ルネッサンスあるいはバロック期(だいたい1530年から1650年ごろ)のマニエリストの画家からその名を借用している。

なかでも有名なのはキアロスキューロ学の父といわれるイタリアの画家、ミケランジェロ・メリッシ・ダ・カラバッジオ(Mechelangelo Merisi da Caravaggio=1573-1610)と、キアロスキューロの技術を完成させたオランダのレンブラント・フォン・リジン(Rembrandt van Rijin=1606-1669)である。

●光源と全体の照明

光源は一つの方向(左上)からきているように見える。

実際の写真はカメラの左側からのフラッシュによって撮影されたのだが、われわれは光が小さな窓やロウソクから発せられているかのように感じてしまう。

全体の照明はローキー、つまり、背景は比較的暗く、全体の光のレベルは低い。

●影の配置とフォールオフ

この場面は速いフォールオフのライティング効果を示すよい事例である。

明るいエリアは急激に濃い陰影に変わっているが、このことから、光源の指向性がかなり強いことがわかる。
死と激しい悲しみを映すように、人々の顔はこわばっている。
影と黒い衣服の暗いエリアが場面の主要部分を占めており、注意深く配置されたライトがそれを強調している。

ハイキーな場面では、逆のことが起こる。
明るいエリアが場面の主要部分を占め、影によって場面が強調されることは非常にまれである。

●テクスチャー

非常に指向性の強い光源と速いフォールオフによって顔やヒゲ、服、そして壁といったものまでテクスチャーが強調されている。

●キアロスキューロ・ライティングの機能

キアロスキューロ・ライティングが実現すべき主要な美的役割をあげると以下のようになる。

1 オーガニックな(非人工的→自然な)機能
2 方向性の機能
3 空間的・構成的機能
4 テーマ性の機能
5 感情的機能


●オーガニックな機能

ライティングはできるだけ《オーガニック=自然に》に見えなければならない。
つまり、できるだけ場面に登場してくるテーブルランプやロウソク、太陽のような実際の光源に近くなければならない。

たとえば、登場する唯一の光源が一本のロウソクだった場合、ライティングは実際にロウソク一本で照明されているように見えなければならない。

これを実現するためには、ひとつの照明を使うか、あるいは多くの場合のように主要な光(キーライト)を“オーガニック”な方向から、つまり実際のシーンにおける光源の位置から当てて、陰影や投影が適切な位置---つまり基準となる光源の反対側に映るようにしなければならない。

しかし、テレビの照明では場面に出てくる実際の光源の位置を単純にコピーするだけでは満足のいく結果は得られない

別の言い方をすれば、「一本のロウソクでは一本のロウソクによってもたらされる効果を作り出すには不充分である」ということである。
だが、単純に光源の数を増やそうとするまえに、一本のロウソクで、あるいはできるだけ少ないロウソクでやってみようと努力してみるのは無意味ではない。

George de La Tourの「The New Born Child(新生児)」という絵画のシーンを再現するとしたら、どのようにライティングすべきだろうか?

【図3.8】

ロウソクを一本、どちらかの女性に渡して、そのままにしておくか?
そんなことはできないだろう。

暗い照明でも機能する高性能の撮影機材を使ったとしても、ロウソク一本では絵の中に見られるような強い明かりの効果を出すことは不可能だ。

高感度のテレビカメラを使っても、適切なベースライト(全体の明かりの基準レベル)が不足している場合には、特に背景の影の部分に画像ノイズ(雪のような電子的な干渉)が生じることになる。

絵をもっとクローズアップして見ると、光はひとつの方向からだけからきているわけではないことに気づくだろう。
たとえば、左上のコーナーにある背景のライトはロウソクの光ではありえない。

【図3.9】

この絵画の照明をシミュレートする照明のセットである。

ライティングのセットアップを作るのであれば、まずひとつか二つのライトからはじめる。そして十分と思えばストップする。

もっと数がほしいとなると、 【図3.9】 に示されている大体のポジションに光を置いてみることになる。

●方向性機能

光をうまく使えば、視聴者の注意を画面のある領域に誘導することができる。

【図3.7】 では、ライティングによってわれわれの注意は人々の顔や手に向けられる。

【図3.8】 では、ライティングによってわれわれの注意は女性の顔から次第に子供の方へ向けられる。

この機能は劇場の照明、さらに写真や映画などのライティングでは非常に重要だが、テレビではあまり問題にならない。
というのはテレビでは、「光をどこに置くか」というアプローチより「クローズアップ」によってわれわれの注意が喚起されることが多いからである。

【図3.8】 キアロスキューロ・ライティングの機能

キアロスキューロ・ライティングの基本的な機能はこのLa Tourの 絵を再現してみることで明確に分かる。

《オーガニックな機能》……ライトは左の女性の腕の向こうに隠れた一本のろうそくから出ているように見える。
《方向性》……われわれの目はまず女性の顔から、最終的には新生児に導かれる。
《空間的・構成的機能》……暗に対しての明、明に対しての暗によってオブジェクトの姿形が背景から浮き出るだけでなく、明と暗の領域の配分がバランスされている。


●空間的・構成的な機能

明(高エネルギー)と暗(低エネルギー)の領域は、それぞれのバランスが取れる ようにフレームの中に配置されなければならない。 【図3.8】

明と暗の配分は同時に、「ボリュームと輪郭」、「前景と背景」の設定にも関係する。

【図3.8】での左側の明るい横顔は暗い背 景から際だっている。
また、彼女の暗い“かぶりもの”と衣服が若干明るい背景に対してコントラストを持っている。

このような明・暗、暗・明のバリエーションは、静的な場面の前景と背景を設定する際 によく用いられるライティングテクニックである。 の死のテーマも同じように伝えられる…… つまり亡くなった司教の上のライトと悲しみにくれる女性の顔にライトが当てられている。 の死のテーマも同じように伝えられる…… つまり亡くなった司教の上のライトと悲しみにくれる女性の顔にライトが当てられている。

●テーマ性の機能

ライティングはテーマやその場面のストーリーを強調しなければならない。

【図3.8】【図3.8】 のライティングでは、「誕生」と 「死」という永遠のテーマが強調されている。

【図3.8】では、二人の女性にライティング のフォーカスが当てられており、新生児はそれ自身が光源の一つであるかのようである。

これらすべての様子は意図的に暗いままで、また柔らかいトーンにされている。

【図3.8】の死のテーマも同じように伝えら れる……つまり亡くなった司教の上のライトと悲しみにくれる女性の顔にライトが当てられている。

●感情的機能

キアロスキューロ・ライティングの感情的機能は、テーマ性機能と密接に関連してはいるが、 実際の場面の目的とは関係なく、われわれの感情に影響を与えるものである。

多くの場合、これら二つの機能は《ユニゾン》で機能する。

ライティングは 【図3.7】【図3.8】の場面において 、ひとつは「深い悲しみと苦痛」、もうひとつは「驚きと喜び」という両場 面の支配的なムードと、そこに表現される強い感情を映し出している。 両方ともにドラマがある。

両方ともキアロスキューロ・ライティングを用いてはいるものの、「Spanish Wake」の悲劇的な死は極端に速いフォールオフで強化されている。
一方の「The New Born Child」では、フォールオフは誕生の喜びと驚きを強め るように、かなりゆっくりである。

両方の場面で、キアロスキューロ・ライティングの主要な機能が調和的に用いられている。 ライティングは明らかに場面の演出、強調に貢献しているのである。

●二つの典型例

典型的なキアロスキューロ・ライティングのタイプとして、《レンブラント》と 《カメオ》のライティングがある。

両方のタイプとも非常に多様な方法で利用され、多くの場合、その基本的なキャ ラクターの一部だけが利用される。

●レンブラント・ライティング

レンブラント・ライティングの特徴は《選択性》である。

特定のエリアだけが注意深く照明され、その一方でほかの部分は意図的に暗いまま に保たれるか照明が当たらないよう避けられる。
フォールオフはきわめて速いが、いくぶん透けた陰影が見える程度のフィルライトはある。

全体的には暗いものの、オブジェクトの姿形を際立たせたり、そのほかの重要な美的定位 を実現できる程度に、背景には部分的に明かりが当てられている。

レンブラントの「読書する老女」には、レンブラント・ライティングの基本的な特徴が現 れている

【図3.10】

あるエリア(女性のブラウス、顔、手)だけに光が当てられており、ほかの部分は比較的 暗いままに保たれている。
フォールオフは速いが、影は適当に透けて見える。
本それ自体が反射版の役割を果たしていて、実際にわれわれがその輝いている面を見るこ とができるわけではないが、光を発しているように見える。
背景は暗いままだが、前景の輪郭を際立たせるために注意深く光が当てられている。

【図3.10】レンブラント・ライティング

キアロスキューロ・タイプのなかでもっとも広く応用されるのが《レンブラント・ライテ ィング=ボリュームとドラマのためのライティング》である。
これは---
・選択的なライティング
・透明な影
・かなり速いフォールオフ
・背景の光

---からなっている。

●カメオ・ライティング

カメオ・ライティングはキアロスキューロ・ライティングを極端なレベルまで推し進めたも のである。

白い形(浮き彫り)が黒い背景からくっきりと浮き出している、カメオ石のそっくりなイミ テーションであり、カメオ・ライティングでは背景が完全に暗いまま、前景の形がくっきり と映し出される。

【図3.11】

ライティングは非常に指向性が強く、濃い陰影とくっきりとした投影が作り出される。
投影はふつう明るいフロアの空間だけ、あるいは時として演技者自身の上に見られるだけで ある。

【図3.12】

「視線を演技者へ極度に集中させる一方、景色を消去する」というカメオ・ライティン グの手法は、テレビ制作上の理想的なライティング技術となってもおかしくない。
だが、残念ながらそれを効果的に生かした事例はまだない。

まず、非常に指向性の強いライティングが用いられると、その結果、演技者は決められた 照明のエリアからはみ出さないように動かなければならないが、これはかなり難しい。
また同時に、ブームマイクなどで音声がとられている場合、その影が俳優の顔に落ちないよ うにするのはなかなか困難だ。

また、このようなコントラストの高いライティングは、高性能なテレビカメラで扱うにして も難しい。
カメラが明るく照明されているエリアを基準に調整されると、濃い影の領域は均一な黒にな り、ビデオノイズの原因になる。
逆に暗いエリアに合わせて調整されると、明るいエリアはカメラに過負荷がかかり、不要に 明るくギラつきはじめる。

極端な明暗のコントラストは同時に色、特に影の中にある色をひずませる。

カメオ・ライティングでのもっとも重大な問題は、強度そのものにある。
もしこの個性の強いライティングがドラマチックな演技とぴったり合ったとしても、絵は奇 妙に劇場的であり、われわれが慣れ親しんでいるテレビのリアリティとはほど遠いものにな ってしまう。

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●3 フラット・ライティング

キアロスキューロ・ライティングとは正反対のものが《フラット・ライティング》である。

フラット・ライティングは、あらゆる方向から光がくるような状況を作り出すため、非常に 拡散したライトを使う。

したがって非常に緩やかなフォールオフを持ち、陰影や投影も、ほとんど気がつかないほど に透明である。
フラット・ライティングでは、主要なライトの存在に気づくことはない。

【図4.13】

●フラット・ライティングの機能

フラット・ライティングは便宜的に使われることが多いが、重要な美的機能を持たされる場 合もある。

●視認性

フラット・ライティングは理想的な視界を目的としたハイキーなライティングである。

キアロスキューロ・ライティングでは、絵のディテールの多くが意図的に暗い影の中 に隠される。
これとは対照的に、フラット・ライティングは大なり小なり全体のシーンを均等に照らし出す。

フラット・ライティングでは、ライティングのことを気にせずに非常に多様なアングルから カメラ撮影することができ、それによって演技者がもっとも広い範囲で動くことができる。
つまり、フラットライティングは《継続的なシーンの撮影には最適のライティング・スタイル》なのである。

しかし、画面の詳細を最も多様な角度から見ることができる一方、フラット・ライティ ングの緩やかなフォールオフはモノの立体感やテクスチャーを損ない、奇妙にフラット な絵を作ってしまう。→【「光」の項を参照】

また、極端なフラット・ライティングは完全な闇と同様、定位感覚にかなり深刻な影響 を与える。

「ホワイトアウト」という現象がある。

これはスキーヤーや登山家が、曇りの日、非常に拡散したライトの中では雪景色から影 が無くなり、白い地表と白い空の区別もつかなくなって、自分が上っているのか下って いるのかという感覚以外のすべての方向感覚をなくしてしまうことである。

霧の中を運転したり、同じ色と同じような照明の施された円形のテレビスタジオセット に入ると、これと同じような定位感覚の喪失を経験することがある。
これもフラット・ライティングが生み出す定位感覚への影響のひとつである。

技術的には、テレビカメラはフラットなライティングが得意である。
というのは明るい部分と影の部分の間にあまりコントラストが存在しないからだ。

顕著な影がないことで、色のひずみや過負荷によるノイズの危険性はない。
しかし、影の不在によって重要な空間定位のきっかけが失われる。

フラット・ライティングではすべてが平坦に見えてしまう。
したがって、ちゃんとした美的目的のもとに利用されない限り、面白いものではない。

●テーマ性と感情的機能

フラット・ライティングでは、テーマ性と感情的な機能が組み合わさっている。
そこで、ここではそれを一緒に考えることにする。

フラット・ライティングは---
・効率、清潔、真実、活気のある雰囲気、楽しさ
---を暗示する。
ニュース番組のセットは常にフラット・ライティングで照明されている。
これはニュースキャスターの着ている服のシワを目立たせないだけではなく、ニュース の《正確性》を際立たせるためでもある。

フラット・ライティングには同時に《機械的な感じ、非人間性、混乱》というイメージもある。

たとえば、ハイテクな活動を強調し、視聴者に効率性を印象づけたければ、コンピュータ 室はキアロスキューロ的に照明されるのではなく、フラットにライティングされるべきだろう。
しかし一方で、この環境は人間的な暖かさや人情にかけているという暗黙のメッセージを伝 えることになってしまうことから避けられない。

尋問室の中の囚人の《孤立感》を強調したいのであれば、先に紹介したホワイトアウトに よって定位感をなくすよう、白い部屋全体をフラットに照明するという方法もある。

視聴者にとって影のない環境は、囚人部屋で彼の目に強い光を当てるという古典的なキア ロスキューロなライティングよりも、囚人の孤立感、無力感を強調するものとしてうつる だろう。

一方で、ハイキーなフラット・ライティングでは《エネルギーと楽しさ》を表現すること ができる。
ゲームショウや多くのシチュエーションコメディでは、エネルギッシュな雰囲気やイベン トの表面的な楽しさを表出するようにフラットなライティングが使われている。

時として、コメディは小さなモーテルの部屋、レストランなどの狭い場所や、夜のシチュ エーションで演じられることがある。
そのような場合、自然なライティングを行うなら適度なキアロスキューロ・ライティング が適していることは明らかだが、コメディのアクションを台無しにしてしまうほど強くな ってはならない。

こうした理論をもとに、病院の廊下のシーンの照明を考えてみよう。

まず病院が「非効率的ですさんでいる」と感じさせるようにする。
次に他の部分には何も手をつけずに照明だけをアレンジしなおして、病院が清潔であり効 率的に運営されているという感じを与えるように演出することを考える。

「すさんだ病院」にはどのタイプのライティングを使い、「清潔で効率的な病院」にはど ちらのタイプのライティングを使うだろう?

最初の演出には《キアロスキューロ》が適しており、次のものには《フラット・ライティ ング》がよい。
なぜか?

それは、キアロスキューロ・ライティングで廊下に出てくる多くの目立った影の効果の影 響が大きいからである。

この影の存在によって---
・確実にこの病院が貧しいため適切な照明を施すこともできない。
・明らかに窓は小さすぎて数が少ないということから古い建物に違いない。
・適切な換気もできていない。
・乱雑で不潔。場所がはっきりしないことから火事になったら逃げ場がない。
・スタッフを含めたその他の部分も古めかしいに違いない
---という思いを視聴者に引き起こすことができる。

一方、フラット・ライティングではすべてが変わる。

視聴者は、潤沢な量の影のない照明と視認性の良さのせいで、廊下もそして病院全体も清 潔であり汚染されていないと思うようになる。
暗い隅に隠れているものもなく、大きな窓があることから全体的にモダンで、空間定位も はっきりしており、職員やドクターも同様に明るく、効率的だと思うようになるのである。
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●4 シルエット・ライティング

シルエット・ライティングは、キアロスキューロでもフラットでもない照明だが、両方の 特性をも持っている。

「極端に明暗のコントラストが強い」という点からはキアロスキューロである。
「ボリュームやテクスチャーよりも輪郭を強調する」という点ではフラット・ライティン グである。

ライティングの技術に関する限り、シルエットはカメオの正反対である。
カメオでは背景ではなく形そのものに照明を当てるが、シルエットでは形にではなく背景 に光を当てる。

シルエット・ライティングは、モノの輪郭を強調することによって得られるシルエットが 効果的であるシーンでのみ使うべきである。

外面的な“動きが命”といったような、「シャープでジャギー(じぐざぐ)なジャズダン ス」はシルエットのライティング向きである。

ロマンチックなシーンはシルエットで表現されると特に目を引く。

【図3.14】

また人物の《アイデンティティを隠す》ためにもシルエット・ライティングは使われる。

匿名にしておかなければならない人物をインタビューする場合、あるいはベッドルームの 窓から豪華な邸宅に忍び込もうとしている怪しげな人物をとらえる場合、シルエット・ラ イティングはイベントをドラマチックに盛り上げる際に一役買うことができる。

一方、意図しないシルエットには常に注意しておかなければならない。

太陽の光をいっぱいに受けた白い壁の前にリポーターが立つ場合、特に背景の強力な光、 つまり壁からの反射を緩和するような反射板か追加の照明がない限り、その姿は確実に シルエットになってしまう。

太陽のまぶしい海岸で、海をバックに写真をとろうとする場合にも同じような問題が起 こる。

海は太陽光を反射しており、巨大なバックグラウンドライトのように機能して、前景の 人物にまったくライトがあたっていないかのようにしてしまう。
このようなライティングでは、コントラストはほとんどシルエットとして現れる。
こうした大量の光をうまく処理しようとすると、カメラは背景の光に引きずられてしま い、前景にあるかたちは暗くとらえられ、結果的にシルエットになってしまう。

こうした問題を解決するには、海辺のシーンを曇りの日に撮影するようにして海のギラ つきを減らしたり、海を背景にするのではなく陸地をバックにして撮影したり、被写体 を日よけ傘の日陰に置いたりすることが必要だ。

お金をかけることができるなら、強力なスポットライトか巨大な反射版を用いてターゲ ットに追加照明を当て、シルエット効果を取り除くこともできる。

次の表は、キアロスキューロとフラット・ライティングを簡単にまとめたものである。

【図3.15】

それぞれのシーンには特定のライティングが必要であり、似たような効果を実現する にもさまざまな手段があることを理解しなければならない。
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●5 メディアによる拡張メディア仕立てのライティング

写真、映画、テレビというすべての写真芸術は、《メディアそのものを操作する》こ とによってライティングの効果を強化したり、変えたり、シミュレートすることができる。

写真と映画の場合、いろんな《フィルターや現像処理》で色や明るさのコントラスト に影響を与えることができる。
テレビでは《カメラのコントロール》、《さまざまな電子的な効果装置やコンピュータ のソフト》を使ってこれらの変数を操作することができる。
さらにテレビでは画面の調整や明るさ、コントラスト、カラーコントロールといった具 合に《視聴者が電子的な操作を行う》ことができる。

たとえば、コントラストを下げたり、明るさのコントロールをあげたりして、簡単にキ アロスキューロ画面の見かけを変えることができる。
これを続けていくと、最終的にはオリジナルのライティングが分からないほど、画面は 色あせたものになる。

ほとんどのメディア・コントロールによるライティング効果は、デジタル特殊効果機器 かコンピュータプログラムによって行なわれる。

コンピュータで作成されたイメージでは、すべてのライティング効果が合成的に生み出 されたものであり、実際の外的なライトやライティング・テクニックとは完全に別のものである。

ほとんどのコンピュータ・グラフィックスのプログラムでは、光源やそれによって生ま れる陰影、投影などをシミュレートすることができる。
影は光源から独立しているため、オブジェクトのどこにでも陰影をつけることができ、 主要なライトの位置とは矛盾するような投影や陰影をもつ《エッシャー》の絵のような パラドックスを作り出すこともできる。

このほかコンピュータ・プログラムとして---
・極端に速いフォールオフやフラットなライティング
・(あるエリアだけにスポットライトの光があたる)スポットライト効果
・(速いコントラストをつけてしまう)ソラリゼーション
・(画像の色を数段階に絞る)ポスタリゼーション
---など、さまざまな機能がある。

ソラリゼーションは、ライティングの変化だけでなく「構造的な変化」のような効果を 作り出すこともできる。

【図3.16】

誰かが死にかかっている(という究極の構造的変化)を見せる場合、伝統的なハリウッ ドスタイルのヒーローの死というパターンにこだわる必要はない。
それよりも、人物をクローズアップし、ソラリゼーションを使うことで人物とそのイメ ージの構造を分解させていくことができる。

しかし、このような強力な《イフェクト=効果》は非常に注意して使うべきであること を理解しておかなければならない。
何度も、あるいは長時間使ってしまうと、場面の感情的インパクトを強化しようという 自分の意図とは逆に、見掛け倒しになってしまう。

【図3.16】ソラリゼーション

この効果では、絵の中のもっとも明るい部分ともっとも暗い部分の段階数が減らされ、 (明と暗の)極性が反転させられている。

ソラリゼーションを受けたイメージは自ら発光しているように見える。
ソラリゼーションはイメージの構造に影響を与える。


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●6 シングルあるいは複数のカメラのライティング

基本的なライティングの原理はすべての写真芸術に適用可能である。
だが、一台のカメラ(映画や1台のカメラによるビデオ撮影)のためのライティングと 、テレビ制作のような、複数のカメラを使った特別なライティングのテクニックを必要 とする撮影の間には運用上の違いがある。

●シングルカメラのライティング

シングルカメラのライティングは、映画制作でよく使われることから、「映画のライテ ィング」あるいは「映画スタイルとのライティング」と呼ばれる。

シングルカメラの制作プロセスでのライティングは、非継続的な、短時間の撮影用のセ ットアップになる。
映画やシングルカメラのビデオ制作では、それぞれのシーン(ショットごとではない) が別々にライティングされる。

ライティングのコントロールはかなり複雑である。

役者やカメラ、マイクなどすべての動きは、あらかじめ注意深く計画されており、照 明機器はスタジオのフロアや特定のロケーションに図面通り設置される。
影のコントロールは遮光板やフラッグ(金属やプラスチック、あるいは布でできた透 明あるいは不透明の小さな板)を照明機器の前に置くことで、不要な光をさえぎったりする。

●複数のカメラのライティング

単一のカメラを利用した場合とは対照的に、ある場面をさまざまなアングルから同時 にカバーする複数のカメラのためのライティングは、それほど厳密である必要はない。

ライティングは、さまざまな場所とアングルからの撮影を可能にすると同時に、ゲー ムショウやコメディ、インタビュー、トークショウやスタジオドラマといった、継続 する長い時間の演技にも耐えられるものでなければならない。
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●6 シングルあるいは複数のカメラのライティング

基本的なライティングの原理はすべての写真芸術に適用可能である。
だが、一台のカメラ(映画や1台のカメラによるビデオ撮影)のためのライティング と、テレビ制作のような、複数のカメラを使った特別なライティングのテクニック を必要とする撮影の間には運用上の違いがある。

●シングルカメラのライティング

シングルカメラのライティングは、映画制作でよく使われることから、「映画のラ イティング」あるいは「映画スタイルとのライティング」と呼ばれる。

シングルカメラの制作プロセスでのライティングは、非継続的な、短時間の撮影用 のセットアップになる。
映画やシングルカメラのビデオ制作では、それぞれのシーン(ショットごとではな い)が別々にライティングされる。

ライティングのコントロールはかなり複雑である。

役者やカメラ、マイクなどすべての動きは、あらかじめ注意深く計画されており、 照明機器はスタジオのフロアや特定のロケーションに図面通り設置される。
影のコントロールは遮光板やフラッグ(金属やプラスチック、あるいは布ででき た透明あるいは不透明の小さな板)を照明機器の前に置くことで、不要な光をさ えぎったりする。

●複数のカメラのライティング

単一のカメラを利用した場合とは対照的に、ある場面をさまざまなアングルから 同時にカバーする複数のカメラのためのライティングは、それほど厳密である必要はない。

ライティングは、さまざまな場所とアングルからの撮影を可能にすると同時に、 ゲームショウやコメディ、インタビュー、トークショウやスタジオドラマといっ た、継続する長い時間の演技にも耐えられるものでなければならない。