リーガル・フォーム・デザインの目的
法律関係の研究者として、日本国の各種法律文書および政府や地方公共団体の各種行政文書等にふれる機会が多い。ところが、それら各種文書の版形、書式・様式には、なんら一貫したデザイン・ポリシーが存在しない。これまでの行政においては、法令に基づいた書式・様式に留意することは当然としても、デザインという観点からの留意は全くなされていなかったといってもよいだろう。
一方、欧米諸国の行政文書には、意図したか否かは別として、一貫したデザイン・ポリシーの存在をうかがわせるものが多い。それは、国民と政府のインターフェイスである行政文書には、官公庁の建築物や公務員の制服と同じく、国民に対して「政府のイメージ」を形成し明確化するという重要な役割があるからだと考える。
さらに、法律文書や行政文書は、同一の法に基づき、同一の目的に向けられた書式・様式ですら、統一が果たされていない。ここ数年、新入生受け入れ時期に新入生から「住民票の写し」を回収する役を担当してきたのだが、法律で定められている「住民票の写し」の書式が、地方公共団体毎にすべて異なっていることに違和感を得た。それらの書式の不統一には、なんらかの積極的な理由があるのだろうか。
加えて、日本国政府が推進する電子政府計画すなわちコンピュータに支援された効率的な行政について考えるとき、紙で処理されている書式・様式を合理的に統一せずして、それら書式を効率的に電子化することは不可能であると考える。さらに、情報公開法の精神に基づいて、国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)に応える行政について考えるとき、合理的な書式・様式を基礎とした効率的かつ合理的な文書管理体制が必要不可欠であることが明らかである。
そのうえ、政府が高度な福祉国家を一つの目標としているのであれば、それら書式・様式には、高齢者障害者にも対応した、誰にでも使いやすい(バリア・フリー / ユニバーサル)デザインが要求されるはずだろう。また、こうした誰にでも使いやすいデザインは、結果的に、行政事務の効率化にも貢献するはずである。
本講義の目的は、政府や地方公共団体で用いられている様々な書式・様式を、合理的かつ美的な観点から改善することにある。本講義の他の講義にない特徴を挙げる。第一に、書式・様式が法令によって規定されており、それら法令を理解し遵守する必要がある点である。従って、法律文の解釈の流儀について取り上げる。第二に、政府や地方公共団体における各種事務を実際に担当する担当者の仕事の進め方を理解しなければならない。法律で仕事の大枠が決まっていたとしても、仕事の細部については、部局の規則に基づきそれぞれの部局ごとにばらばらであることが判明している。とはいえ、長年維持されてきた慣行を極端に変更することは現場を混乱させる惧れがある。変更と維持のバランスをとる必要がある。第三に、利用者の利便を考慮しなければならない。それは二年目となった今年の授業も同じである。
一般に、事務に用いられる書式・様式をデザインする際には、業務観察・利用状態観察を踏まえた上での分析と提案が行われるが、そのすべてに法令がかかわってくることが特徴である。初年度は、市民にとってもっとも身近だと考えられる、地方自治体の「住民票の写しの申請用紙」のデザインをした。
本報告は、今年度の講義の報告である。昨年度から受け継いだものから、次年度へ向けての問題点を示し、この研究領域の必要性をひろく訴えたい。
法政大学社会学部助教授 / 武蔵野美術大学非常勤講師
白田 秀彰
・12/21小平市役所にて新書類 のプレゼン
・サイト更新12/20
