平安時代の和歌には多くの地名が登場するが、実は現地で詠まれた歌はほとんどない。旅の危険が多かった平安時代の日本において、遠く離れた地域を実際に見ることは難しかったからだ。そこで当時の人たちは、全国各地の地域に特有のイメージやシンボルを結びつけ、そのガイドラインに沿って歌を詠めば現地に行かなくても良いという約束事を立てていた。つまり、当時の人は現地の様子を確かめずに思い込みから和歌を詠んでいたのだ。そんな「平安の人々が日本各地に抱いていた思い込み」という視点から和歌を読み解いた解説本を制作した。